現在のレガシーに対する認識
エルドレインの発売以降、レガシーの環境におけるメタゲームの中心には常に《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》と《アーカムの天測儀/Arcum's Astrolabe》、そして《夏の帳/Veil of Summer》が存在しています。
天測儀で得た強固なマナ基盤に支えられて、基本土地にも関わらず4c以上を可能にした柔軟なコントロールデッキは、オーコ、帳を強く使えるアーキタイプとしてティアの上位にあります。
テーロス還魂紀で登場した《死の国からの脱出/Underworld Breach》擁すブリーチコンボは、その立ち位置からオーコに対して有利なデッキとして確かな地位を得ていましたが、いかんせんやっていることがダメすぎました。レン6も真っ青な勢いで収監され、季節外れの花火になってしまいました。
テーロス還魂紀によるレガシー環境への影響がほかに無いとすれば、メタゲームは再びテーロス発売前の状態に戻ります。もちろん各プレイヤーのメタに対する順応度、環境理解度の上昇などによりティアの分布に変化は起こるかもしれません。
そんな中でのアルーレン
ブリーチコンボの台頭は、その対策カードである《減衰球/Damping Sphere》の採用枚数の増加をもたらしました。BUGアルーレンはコンボ以外の勝ち筋が強く、無理に無限コンボを決める必要はありませんが、4cタイプは致命的です。
ティア2以下のデッキにとって何より辛いのは「ついでの対策に引っかかる」ことです。《減衰球/Damping Sphere》の増加はまさしくこれに該当するものであり、この2マナのファクトを対処できない限り勝てません。
また昨今のメタで向かい風だったのはエルドラージ 、赤単プリズン等の多色地形を咎めるデッキが、《アーカムの天測儀/Arcum's Astrolabe》によってその戦略を十全に発揮できなくなったことです。死儀礼末期のチェコパイルは、豊富な2色土地と高いカードパワーにより環境を席巻しましたが、現在では氷雪等を5枚以上採用した上で天測儀により色事故を防いでいます。これにより得た色事故耐性は、プリズン系デッキからのロックに対してデッキ構築レベルで耐性となりました。
そのようなデッキが増えたことにより、相対的にアルーレンの立ち位置は良くなったように思われます。プリズン系デッキの《虚空の杯/Chalice of the Void》、《三なる宝球/Trinisphere》、《血染めの月/Blood Moon》はとても厳しいカードであり、2t目に追加される《難題の予見者/Thought-Knot Seer》はゲームを終わらせてしまいますから。
アルーレンの最前線
これを書いているときにとても嬉しいニュースがありました。
【#神決定戦】捉えた一瞬の隙!!魔法の《花の絨毯》に乗って《王冠泥棒、オーコ》が着地、ティムールデルバーのお株を奪う華麗なビートダウンで挑戦者が勝利をつかみ取った!!『第16期レガシー神』は鈴池 史康!!おめでとう!#mtgjp pic.twitter.com/EgIp4PSx19
— 晴れる屋 (@hareruya_mtg) 2020年3月22日
久しぶりにみるアルーレンの活躍です。
特徴的なのはやはり3枚という《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》の採用枚数です。直近のMF名古屋で行われた日本選手権レガシーで結果を残したBUGアルーレンにもウーロは採用されていましたが、そちらは1枚でした。
序盤のアドバンテージの取り合いが重要なアルーレンと、ウーロのcip能力が想像以上に噛み合っていたというのが感想です。追加で土地をセットする能力は、質の良い2マナ、3マナのカードでの2アクションが可能な時間帯を1ターン分縮めます。
ただしこれはタイミングが重要で、手なりで回すと痛い目を見るような類のものです。3マナのアクションはレガシーにおいてはビックアクションであり、必要なケアをした上で唱える必要があります。
ウーロ以外で言えば、《永遠の証人/Eternal Witness》の採用も重要です。BUGアルーレンはコンボデッキではありますが、デッキ全体がボードアドバンテージを得ることに特化しています。ウィットネスは墓地に落ちているどのカードを拾ってもよく、それはウィットネスが唱えられるならばほぼいつでも可能です。
アルーレンの魅力(私は4cが好きということ)
長い前置きでしたが、アルーレンの魅力です。だれも読んでないブログですので自己満足的に自分が好きなものを浅く何度も語りたくて書いてます。
レガシーのデッキとして、アルーレンにスポットが当たったのはコンスピラシー発売の前後だったと記憶しています。当時のBUGにはカスケード、デルバーあたりがありましたが、コンスピラシー産の良質なクリーチャーである《トレストの使者、レオヴォルド/Leovold, Emissary of Trest》がそれらのデッキを強化するとともに、それまで《帝国の徴募兵/Imperial Recruiter》を絡めたコンボルートしかなかったアルーレンを、リクルーターlessアルーレンへ変革させました。
そこからBUG型アルーレンの研究は進んでいますが、根幹となる思想は大きく変わってはいないと考えています。
(本ブログのとぐろ巻きは、このリストにもあるように当時採用されていた超アドバンテージ生物《とぐろ巻きの巫女/coiling oracle》から来ています。可能ならば今でも採用したいくらいですが、今なら間違い無くウーロで良いと言われるのがオチです。)
アルーレンにとってコンスピラシーで得たのはレオヴォルドだけではありません。帝国の徴募兵の白版《護衛募集員/Recruiter of the Guard》の登場は、リクルーター採用型のアルーレンに大きな変化を与えます。サーチ範囲が異なることもそうですが、なによりもアルーレンを組む敷居が大きく下がったことにありました。
画像は帝国の徴募兵/Imperial Recruiter:シングル価格 - Wisdom Guildより
4C型は採用するリクルーターの能力に応じたP/Tの制約を受けます。帝国の徴募兵ならばサーチできるものはクロックが貧弱であり、護衛募集員ならば除去耐性に不安があります。またリクルーター自体は3マナのため、テンポが良くありません。3T目にフルタップで出して《目くらまし/Daze》を合わせられたら目も当てられず、そのままマウントを取り続けられてゲームエンドまで持ち込まれることもあります。
だからこそリクルーターはコンボパーツの核なのであり、使い方しだいで状況をひっくり返せるシルバーバレットの要です。
採用できるカードが多く、3マナであることとP/Tがリクルーターの制約内であることを守れるならば、コアとなる《魔の魅惑/Aluren》、《洞窟のハーピー/Cavern Harpy》、リクルーター、バウンス生物、ドレイン生物の約10枚を補強する役目で埋めることができます。これが私にとってのアルーレンの魅力であると考えています。
10枚は決して少ないパッケージ枚数ではないですが、採用するカードによるデッキの指向性のようなものは様々です。罰する火パッケージの採用、緑の太陽の頂点と優良緑生物の採用、《アカデミーの学長/Academy Rector》とエンチャントのレクターパッケージの採用などは、メタに影響を受けるため生きているリストかどうかは別に、自身の好みに合わせた構築が出来る懐の広さを物語っていると思います。
Update Aluren’s list
過去にこのような記事を書きました。
冒頭でも書きましたが、この1年間のレガシーの変化には目を見張るものがあります。レンと6番により成立した4cコントロールが環境をとったかと思えば、昨年末オーコにより研究が進み頭角を表しつつあったバントミラクルは瞬く間にメタの一角を占めるようになり、死の国からの脱出でLEDとの2枚コンボを生んだブリーチは皆が分かっていたように儚い命でした。
そんな1年の中でアルーレンが得たものを振り返ります。この1年は、青緑のカラーが積極的に強化された年でした。
①《氷牙のコアトル/Ice-Fang Coatl》
悪意の大梟がデッキから抜けることがあるとは思いませんでした。接死に条件がついたとはいえ、代わりに得た瞬速は相手のコンバットを狂わせるのに十分すぎるものです。接死の条件に対してリターンが大きすぎます。
青緑というマナコストはハンデスと相性が悪く、1Tハンデス→2Tコアトルという動きのためには1T目がデュアランが必要です。ままある展開としては、2ランドキープで不毛を避けるために基本土地を優先するとハンデス+コアトルができなくなります。気をつけたい点です。
なお緑の太陽の頂点から引っ張ってこれるのは◎
②《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》
全てが鹿になる
③《夏の帳/Veil of Summer》
打ち消されない、キャントリップ、青と黒からの呪禁というのは1マナでするには盛り過ぎです。得たものとしては大きいのですが、プラマイで言うと流行りすぎてこちらのハンデスの価値の下落の方が大きいです。
④《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》
個人的には懐疑的でしたが、ほかのデッキへの採用率からするにやはり強力だったのだと思います。脱出コストによる墓地からのキャストは打ち消されても問題ない(唱えなおせばよい)という意味でミッドレンジの戦略にマッチしています。課題である青青緑緑という脱出コストについても、2マナ圏での採用生物が《悪意の大梟/Baleful Strix》から《氷牙のコアトル/Ice-Fang Coatl》へ変更されていることも追い風でした。
ドローおよび追加の土地セットはcipだけでなく攻撃時にも誘発します。Wotcの生物強化路線の最前線といえる能力だと思います。
⑤《疫病を仕組むもの/Plague Engineer》
はじめは《仕組まれた疫病/Engineered Plague》の生物版程度の認識しかありませんでしたが、これの利点は接死で相手の生物を止めることができること。自身でライフを詰めることができること。エンチャントからクリーチャーになるだけでこんなに変わるかと、使われて強さを理解しました。
こうしてみるとこれらはレガシー全体に影響を与えたものであるとともに、半年後に何枚が生き残っているかわからないレベルのパワーカードですね。
コンボの枠としては以下のカードが新しく選択肢として加わりました。
⑥《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》
無限ドレインを成立させる役割として、 《寄生的な大梟/Parasitic Strix》はcipで2点ドレインでしたがこちらは1点ドレインです。その代わり食物(Food)を生け贄にささげることで戦場に戻る能力と、黒1マナという軽さを持っています。
前半の能力はオーコと《金のガチョウ/Gilded Goose》から生まれる食物を使用すれば達成できますし、後者は《断片無き工作員/Shardless Agent》から続唱で唱えられることを意味しています。コンボスタート時であれば工作員からめくれる猫のほうがヒット率が高いですが、一方でコンボ時以外ではずれが増えます。
墓地から戻る能力というのが相手のクロックを止めてコンボまでの時間を稼ぐ動きにマッチしていてよいと思います。
それ以外にも《厚かましい借り手/Brazen Borrower》や《溜め込み屋のアウフ/Collector Ouphe》、《活性の力/Force of Vigor》など重要なカードがいろいろ登場した、実りの多い1年でした。
初めからある追記
この記事は「アルーレンの最前線」の項目にて書いているとおり、先月から書いてきました。文章を書くのが遅いためだらだらと1か月以上もかかってここまでたどり着いています。MOパンダさんの神レガ優勝以降、アルーレンは比較的Tiarの上位に入るような優良アーキタイプとなりましたが、ここ二週間でそれもおわり、イコリアにて新たに登場した『相棒』持ちの生物によってレガシー環境自体が一変しました。
新型コロナウィルスの影響でテーブルトップの大会も行われておらず、もっぱらMO上ではありますが、アルーレン側からみた採用に足る相棒生物を組み込んだリストの調整が行われています。
メインボードに《魔の魅惑/Aluren》を使用しつつ採用できる相棒として現実的なのは《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》くらいだと思います。ヨーリオンを相棒として使用した際のデメリットである”80枚構築”は安定性に不安が残りますが、この構築にはシルバーバレット用のカードを素引きする可能性を下げる効果もありますので使い勝手は気になるところです。
相棒の採用率としては《夢の巣のルールス/Lurrus of the Dream-Den》、《黎明起こし、ザーダ/Zirda, the Dawnwaker》の次あたりに来ているだろうと思われますので、アルーレンに限らず参考になるリストはたくさん出てきそうです。
というわけで、やりたいことをふわっと詰め込んだリストを考えて、今回の記事の締めとしたいと思います。
以上。